Adyton Opera

純A級?50W+50W


外装はすべて非磁性体のアルミパネルで纏われていて、MILスペックに基づき組み立てられている。ボリューム・コントロールにはヴィシェ社コンダクティヴ・プラスティック・アッテネーターを採用。電源部にも4万μF80V耐圧の高品位コンデンサーを使うなど、小さな筺体に高品位パーツが惜しみ無く投入されている(参照:ステレオサウンド創刊30周年特別号)
写真で見た時は
Lo-Dみたいな古そうな印象だったけど直に見ると現代的な高級感で VIOLAのLegacyやTECHNICAL BRAINのTBP-Zeroの位に上がった。フロントの厚いアルミパネルはもったいぶらずゆるやかに8mmぐらいR加工されている。相当量のアルミが削られている。天板・底板は通常のパターンだけど薄っぺらでなく 裏側のアルミパネルまで仕上げがきれい。工程数優先でないブランドの在り方。また、それが本当にアンプを作りたいためであったのか、手に触れたときから幼少のようにやわらかな優しい心地がしたもの。これが非磁性体のアウラの感触かな…とつい無宗教的な解釈をしたけど非磁性体という理由だけじゃない。このアンプは前のユーザーにも愛されてきたはず。設計者でサキソフォン奏者でもあるロルフ・オルスタッドの心配りとノルウェーの森の空気と、霊性に霧の濃さがある。工業的打算のない製品は愛される。ノルマティカルな大量生産品は実用重視になるけど。こだわりをもった集中力。そこに創造の原理が働くのだと思う。




AC Cableも着脱可能:ACROLINKがよかったです
Adyton Operaは幼稚園用の椅子に乗るサイズながら重量:13kg。意外な重さを感じる。


5系統の端子群はパワーアンプとの距離を図ってかCD入力が下の方にある。上の方にはVIDEOがある。SPは2系統だが切り替えスイッチはなく、TAPE出力はあるがTAPE用のセレクターはない。純度のこだわり。介在するのはPROGRAMMEの切り替えとVOLUMEのみ。トーンコントロールもない。またW:210mm H:190mm D:360mmという筺体の中は、プリアンプとパワーアンプ部など各セクションが分離配置されている。








デスクトップPCと幅が同じぐらい

"オペラ"というだけあって中域のエネルギーは充実してる。解像はぼんやりと甘くもやけるのを基調の上、センシティブな性質が支配している。鏡面AURAがハイエンドを身につけて高次な止揚に至ってる。解像度は意外に高いけど、うまれたるままの心をもっているので音楽が楽しめます。低域は描写力こそ国産に負けるが、空気で吹いた感覚の楽器感と膜鳴楽器には量感がある。またケーブルの音の違いも描き分けることが可能な解像性を得ていながらも、音の悪いCDが聞けるのもうれしい。演奏の気に入ってたドビュッシーのJeux [apex 0927 49534 2 1987 ERATO] が聞ける。このCDは聞けるもんだった。聞けないもんだと思ってた。dhmの50周年記念の古典音楽集はどれを再生しても美しい。QUAD 21Lとの組み合わせは最高だった。




                       

ADYTON
「1979年ノルウェーで創業。ロルフ・オルスタッド自らスタジオ・ミュージシャンとしてプレーすることから、ライヴ・サウンドとリプロデュースされる音楽との相違に深く関心を持ち、可能な限りライヴの音楽の息吹を保ちながら正確な音楽要素を表現できるアンプをデザインすることを目標としている。」
(ステレオサウンドより)
「1994年 Opera発売。日本に紹介される」
僕は「ミュージシャン」という存在がなんかあまり好きでなかったのだけど、ロルフ・オルスタッドという方は演奏や再生を問わずあらゆる立場における音楽芸術を、変な観念とか自我に汚染されることもなく普通に認めて実践しているようだった。そこに製品にたいするシンセリティが生まれ、使用者は安堵の念にすんなりとした聴きやすさで以て音楽を慈しむことができるという起承転結。この製品を手にするとやはり西洋人の中には自身の音楽性のみを是とするような要素が日本人ほどにはないように思えてくる。音楽にたいする情念のほうが勝っているかのように。物理に堆積することなく聴ける音楽性の解放はミュージシャンならではと認めたくなるはず。

                       





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