CANTON ERGO690
ターナスサウンドの現在







カントン ERGO 690



2022年で50周年になるドイツのブランド。日本には馴染みが薄いけど、現在、国内ではQUADRAL(クアドラル)の次に売れているドイツメーカー。
CANTON=カントンなので、広東と変換され、中国メーカーかと思われているけど、URL このサイトによると「CANTONの社名はラテン語の“Cantare”(歌う)とドイツ語の“Ton”(音)の合成語で、1972年にドイツに設立されました」とのこと。背面のスピーカー端子のパネルにはMade in Germanyと銘打たれており、製造もドイツになる。CANTONのレビューが少ないから以下冗長になります。







CANTON / ERGO Series
(輸入代理店 CAVより)
<特長>
天然木突き板仕上げの極めて堅牢なキャビネットをもち、チェリーの木目が美しいERGOシリーズは、1972年創業のCANTON社のスタンダードモデルです。
バッフル面を湾曲させており、部屋のどこにいても音がよく届く広い水平指向性を実現しています。
ツィーターにはマンガンアルミの独自開発ドーム型、ミッドとウーファーには独自円錐カーブのアルミ振動板、エッジ構造は波型にして、前後の動きが等しくなるよう動作忠実度を上げました。(TCC技術:最適な湾曲円錐カーブ)
DC技術(Displacement Control)…耳に聴こえない超低い帯域でウーファーが制御できない振幅をコントロールする技術です。このことによりウーファーが正確に動作し可聴低音域をシャープにしています。
ネットワーク技術は部品精度を保持し、CANTON独自の方式で歪みのない広帯域化を実現しています。
仕様

ERGO 690-CH2】(チェリーブラウン)
形式:3ウェイ4スピーカー バスレフ フロアスタンド型
使用ユニット:トゥイーター(アルミニウムマンガンドーム 25mm×1)、ミッドレンジ(アルミニウム 180mm×1)、ウーファー(アルミニウム 200mm×2)
周波数特性:20Hz〜40kHz
出力音圧レベル:88.3dB(1W/1m)
クロスオーバー周波数:300Hz、3.5kHz
定格入力:170W/最大320W
インピーダンス:6Ω
外形寸法: 230(W)x1050(H)x305(D)mm
質量:23.5kg

上位モデルに【ERGO 695】がある。
周波数特性:20Hz〜40kHz
幅x高さx奥行 260x1150x345 m
重量 32.2 kg

ERGO 670-CH2】(チェリーブラウン)
形式:2.5ウェイ3スピーカー バスレフ フロアスタンド型
使用ユニット:トゥイーター(アルミニウムマンガンドーム 25mm×1)、ミッドレンジ(アルミニウム 180mm×1)、ウーファー(アルミニウム 180mm×1)
周波数特性:25Hz〜40kHz
出力音圧レベル:87.5dB(1W/1m)
クロスオーバー周波数:300Hz、3.5kHz
定格入力:110W/最大170W
インピーダンス:6Ω
外形寸法:215(W)x950(H)x285(D)mm
質量:17.3kg

ERGO 655-CH2】(チェリーブラウン)
形式:2.5ウェイ3スピーカー バスレフ センタースピーカー
使用ユニット:トゥイーター(アルミニウムマンガンドーム 25mm×1)、ミッドレンジ(アルミニウム 180mm×1)、ウーファー(アルミニウム 180mm×1)
周波数特性:26Hz〜40kHz
出力音圧レベル:87.9dB(1W/1m)
クロスオーバー周波数:350Hz、3kHz
定格入力:110W/最大160W
インピーダンス:6Ω
外形寸法:530(W)x205(H)x285(D)mm
質量:10.5kg
※スピーカースタンドは付属されておりません。

ERGO 620-CH2】(チェリーブラウン)
形式:2ウェイ2スピーカー バスレフ ブックシェルフ型
使用ユニット:トゥイーター(アルミニウムマンガンドーム 25mm×1)、ウーファー(アルミニウム 180mm×1)
周波数特性:33Hz〜40kHz
出力音圧レベル:86.5dB(1W/1m)
クロスオーバー周波数:3kHz
定格入力:70W/最大130W
インピーダンス:6Ω
外形寸法:205(W)x340(H)x275(D)mm
質量:7.5kg
※スピーカースタンドは付属されておりません。

LS-650-2】(スピーカースタンド)
寸法(高さ):61cm
質量:6.6kg
対応スピーカー:ERGO 620-CH2、ERGO 655-CH2










CANTON ERGO 690


グラフ 作成中


CANTON ERGO 690


音楽向けか映画向けかというと音楽向けと思う。ソースが良いと実力が出てくる。鮮明な傾向なので映画でもいいけど、音楽性があって音楽で使うと楽しめる。ただ、カンターレというメーカー名だけれどヴォーカルは全体の一部のように聞こえる。声はあまり肉付きよくない。なにか味が抜けている。DIATONEのフルレンジのP610FBに較べて台詞は聞き取りにくい。
ERGO690とERGO695はユニットが4基も搭載されているけど、2WAYのように晴れやかで聴きやすい。ユニット数のわりに純度が高いからかスピーカーケーブルの違いもよく出てくる。分解能はDIATONE DS-1000ZAなどに比べると格段に劣るが、フルオーケストラが聴けないとかではなく、DIATONEとは異なる方向性の上質な再現力。となると音楽性を追求したスピーカーとなるけどイギリスのSpendorやフランスのJM lab (Focal) のように心に染みたりする風ではなく、表面的な音で典雅に聴かせる。同じメタルコーンでも、QUADRAL(AURUM VULKAN9やMegan)のように星空満点のような透徹とした鳴り方ではなく(QUADRALの音色を感じることもあるけど)、木質の響きや太陽のうららかさなどの要素を併せ持つ。なのでALR Jordanと傾向は似ているけどALR Jordanのほうが爽やかでCANTONのほうが豊か。全体的なバランスはドイツの王道のターナスサウンド







CANTON ERGO 690


周波数特性は20Hz〜20kHzとなっている。個人的には可聴帯域の密度を重視しているこのスペックは好き。ハイレゾをやりたければアンプとスーパーツイーターを付け加えるのがよい。低音の20Hzは低いけど、そう膨らまず、厚みを加味する具合。クラシック再生ではウーファーの存在感はない。ポップスロックの場合はユニットが反応しやすくウェルバランス。中域高域方目は価格コムや5chのレビューのとおり開放的で華やかだけど、低音はJBLやDALI Zensor7やQUAD 21Lのほうが美音と思う(同時比較はしていない)。でも「DC技術」のためか阻害感がない低音。





CANTON ERGO 690



リアバスレフはタイトな傾向だけど、フロントバスレフは膨らむ傾向。でもCANTON 690の場合はそう膨らまない。







CANTON ERGO 690


空気感
メタルコーンゆえにか微小音は出にくい。ゲームのサウンドトラック(アコースティック録音)など、ヘッドホンや小型オーディオユーザー向けにコンプレッサー(大きい音と小さい音の差を縮める加工)がかけられている音楽ソースが得意に思えた。その点、エクリプスの卵形スピーカーとは反対。エクリプスの使用者からは偽物の音が見抜けないスピーカーと言われる事だろう。ソースの粗が見当たらないし、媚び売っていて耳にぬるいと感じるときもある。でも逆に、コンプレッサーがかけられている偽物の音のCDはとっても典雅な響きを醸成する。あと90年代のCDは蒟蒻畑のように滑らかで、自然環境音はウォータースライダーを滑っているかのように生き生きと聞こえる。






CANTON ERGO 690


小音量再生
小音量時の聞こえのよさはSONY SS-HA1やYAMAHA NS-F700やUNISONIC Plata AHT-250F2のほうが優れていると思う。CANTON ERGO 690は音量を絞ると、音色が退色する具合。なので音量が小さいことに気付かなかった。比重の重いメタルコーンの特質だと思う。パルプやボロンやケプラーやファイバーグラスに比べて内部損失が少ないのもあり、音量を上げないと視界の開けた心地がしない。音量さえ確保できれば、温水プールで泳ぐような心地良い躍動で音楽が羽ばたく。ニアフィールドには向いてない。ツイーターがキンキンするときがある。






CANTON ERGO 690



湾曲している。ホームオーディオ向けで、指向性が広い。DALIと同じくらいに。ERGO690は身長1mを超えるのに、近くで床に寝ながら聞いても苦しい音がしてこない。聴きやすい。これはいけません。Zzz..






CANTON ERGO 690





ツキ板仕上げ。

空間再現性
SONY SS-HA1ほどは視界の開ける心地がしない。素直な音でもない。CANTON ERGO 690は音量を上げると華やかな音が出てくる。「開放感」と「華やかさ」は別の問題で、SONY SS-HA1は華やかな風ではない。
スピーカーが消えるようなスムージー感や上下遠近のパースペクティブは、SONYやYAMAHAやPIONEERやDIATONEやKENWOODやEclipseなどの日本のメーカーのお家芸。虫の鳴き声をNoiseではなく声として認知する日本人ならではで、全てを変換して、かゆいところに手が届く再現性。CANTONのVENTO / ERGOは雑味を漉されて美音になっている具合で心地良いけれど、のっぺらぼうで、空間もやや平面的な再現になる。かといって日本のスピーカーに負けているとは言ってない。CANTONの魅力については語彙力が弱いからもう述べないけれど、ドイツにはドイツの良さがあってカントンにはカントンの持ち味がある。







CANTON ERGO 690


このスピーカー端子が合理的だった。言葉で説明しづらいけど、穴が開いているわけではなく、U字に掘られている。太いケーブルも一生懸命穴に通さなくてもいい。上からU字に入れて、キャップで締める。バナナプラグを使いたくない人が楽出来ます。

3WAYダブルウーファーなのでバイアンプにしたら効果覿面だろうと思っていたけど、アンプによるのかもしれない。SHARP SM-SX10はバイアンプにしても目に見える変化はなかった。デジタルアンプは駆動力がしっかりしているためだろう。でも分解能とダイナミックレンジが向上して、写真屋でプリントする用紙で例えると高級紙→最高級紙になったかのよう(D-MAX値が上がり黒の再現性が向上)。バイアンプにすると安定感が僅かに増す。声が少し豊かになる。

以上、やや酷評気味に書いてしまったけど個人的にはかなり印象の良いスピーカー。ドイツの正確な音はもとより、カンターレのトーンというブランド名のとおり音楽が生き生きと唄っている。