Panasonic SL-PS700


PLAYER / AMP / SPEAKER / HEADPHONE / CABLE / etc.




Panasonic SL-PS700
上:Technics SU-C1000 下:本機 SL-PS700
一般的なプリメインアンプでの再生ではデジタルプレイヤーの違いは出にくく(パッシブプリ+小出力アンプの受動的な純度の高いシステムで使うと違いはよくわかるけど)、比較するCDプレーヤーと同じDISCを双方同時再生して、アンプ側でセレクターをカチャカチャ切り替えてもいまいちわからないのだけど、機械は定性的にその音を出し続けるので、やはりずっと使っていると堆積し、主観とか先入観ではなく音の印象がmarantzならmarantz、PanasonicならPanasonicとなってくる。楽音が埋没せずに出てくるとか出てこないとかいう解像能力のほか「音色」が各々に存在してる。音の再生ではなく音楽の演奏というふうに考えると、これは大きな要素だ。「再生」なら功利的に攻めていけばいいのでC/P的に入門機に落ち着くのだけど、「演奏」となるとベルクソンがしきりに言う「質」とか「時間」というものが支配する世界になってしまう。そしてこれが現象学的に還元された現実の世界なので、この世界を支配しないと趣味が本当の意味では卒業しきれないということにもなる。そんな話はどうでもよいのである。このプレーヤーは、DENONのAlpha 24 Processingや、PIONEERのレガートリンクコンバージョンや、KENWOODのD.R.I.V.E.のような豊穣な肉感はないけれど、素直な音がする。ある種なつかしい音。つまらないといえばうわさをすれば影、marantz CD-17のDACもMASHと同じく1bit。両者は1bitらしい素っ気なさとそのまんま感が通底していることを連想す。marantzのほうがシックな色気と毛羽立ち感など特徴があって個性があるかな。それは恐らくRCA出力用のアンプとかアナログ部の問題だろう。Panasonic SL-PS700はmarantzの高級機のSA-14よりもある種スムーズで、オーケストラは柔らかみや音像の崩れた感はあるが作ったところがなく気楽。ポップス系はブラックの宇宙。無個性で色彩がなく素っ気ない無機質な空間。ここにこそ聞き飽きないよさがある。それ以前に魅了されてもいないが。モニター的でも具像する感じでもなく、単純に蒸留水的で、この音にはバッファアンプのケミカル成分がほしくなるような純国産具合。水のように打ち解けやすいので、プリアンプの指揮に自由にソースは演奏化する。アンプが良いと魅惑的に鳴りそう。
TASCAM CD-355に比較すると少しぼやけた薄味のところはあるものの、リーク電流とか経路の干渉みたいな要素は感じない。分解能の差だと思われる。それよりSL-PS700は年代物なのにとても快調に動作してることに驚き。1991年というと、僕はまだ小学生だぞ。これは当時の中高生にとって高級品の部類なので、ミニコンのように壊れてしまったら困るけど、長持ちしすぎである。電源入れて再生まで3秒。開閉トレーの動作は静粛。オニオオハシのような滑らかさ。トレーを下から見ると鉄棒にグリスが塗ってあって未だに潤滑を助けてる。ミニ四駆みたいに。このセラミカルな滑らかな動作音は要素が繊細すぎてTASCAMのICレコーダー(内蔵マイク)ではうまく残せなかった。[.wav]