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『パイドン』
1 名前:ナナシンクロニシティ 2006/12/17 18:44
紀元前399年の春、ソクラテスは「國家公認の神々を拝まず、青年を腐敗させる」という罪状で告発され、アテナイの牢獄で刑死した。刑死の日の早朝別れを告げに牢獄に集まった弟子たちと、ソクラテスは日暮れまで魂の不死について深く厳しい哲学的対話を交わしたが、その内容が本対話篇である。この対話はその場に居合わせたパイドンによりプレイウスの人エケクラテスに伝えられた、という形で対話篇は進行する。

2 名前:ナナシンクロニシティ 2006/12/17 18:45
一、序曲

3 名前:エケクラテス 2006/12/17 18:45
パイドン、あなた自身があの日ソクラテスのお側にいたのですか。あの方が牢獄で毒をあおいだあの日に。それとも、だれか他の人からその話を聞いたのですか。 

4 名前:パイドン 2006/12/17 18:46
私自身がそこにいました、エケクラテス。

5 名前:エケクラテス 2006/12/17 18:48
それでは、いったい、あの方は死のまえにどんなことを話されたのですか。また、ご最期の様子はどのようなものですたか。私としては、ぜひお聞きしたいのですが。というのも、近頃ではプレイウスの人でアテナイを訪れる者はほとんどいませんし、また、他国の人で、そのことについて私たちになにか確かな情報をもたらすことができるような人は、ながい間一人もアテナイから到着していないのです。じっさい、私たちに知らされたことは、あの方が毒をあおいで亡くなられたということだけで、その他のことについては何ひとつ聞くことができなかったのです。

6 名前:パイドン 2006/12/17 18:48
すると、裁判がどのように行われたかも、ご存じなかったのですか。

7 名前:エケクラテス 2006/12/17 18:50
いや、そのことは私たちに知らせてくれた人がいるのです。そして、ずっと不思議に思っていたことは、裁判ははるか以前に終結したのに、あの方が亡くなられたのは明らかにだいぶ後になってから、ということです。それは、なぜでしょうか、パイドン。

8 名前:パイドン 2006/12/17 18:50
あの方に、エケクラテス、ある偶然が起こったのです。というのは、裁判のちょうど前日に、アテナイ人がデロス島へ送る船の船尾に花飾りがつけられたからなのです。

9 名前:エケクラテス 2006/12/17 18:51
なんの船ですか、それは。

10 名前:パイドン 2006/12/17 18:55
それは、アテナイ人の伝説によれば、その昔テセウスが七人の若者と七人の乙女とを連れてクレタ島に渡り、かれらの生命も自分自身の生命もともに救ったという、あの船なのです。言い伝えによれば、そのとき、アテナイの人々は、もしかれらが救われたならば、毎年デロス島の祭へ使節を派遣しましょう、と神アポロンに祈ったそうです。そのとき以来いまだにいたるまでずっと、かれらは毎年使節をこの神に送っているのです。ところで、この祭への使節の派遣が始まると、その期間中は、国を清浄にたもち、何びとをも国宝の名のもとに処刑してはならない、という掟がかれらにはあるのです。その期間とは、船がデロス島に着き、またふたたび当地へ帰るまでの間ですが、ときに逆風がかれらの足止めをしたりすると、それはたいへん長い時間になることもあるのです。そして、祭への使節の派遣は、アポロンの神官が船尾に花飾りをつけるときに、始まります。これが、さきほど言いましたように、ちょうど裁判の前日にあたったのです。このために、ソクラテスは裁判と死との間に長い時間を牢獄で過ごすことになったのです。

11 名前:ナナシンクロニシティ 2006/12/17 19:00
ここは、意味のある偶然性で、神々のはからいが読めるところ。

12 名前:エケクラテス 2006/12/17 18:58
それでは、その死そのもののご様子はどのようでしたか、パイドン。どのようなことが語られ、どのようなことがなされたのですか。そして、あの方に親しい人々のうちで、だれがその場に居合わせたのですか。それとも、だれもその場に居合わせることを役人たちが許さず、あの方は友人からはなれて孤独のうちに息絶えられたのでしょうか。

13 名前:パイドン 2006/12/17 19:00
いいえ、けっしてそんなことはありません。居合わせた人々はおりました。それも多くの人々が。

14 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:01
では、そういうことをすべてできるだけ明らかに私たちに知らせてはくださいませんか。もし、いまなにか忙しいご用事がなければ。

15 名前:パイドン 2006/12/17 19:02
ええ、なにも用事はありませんから、あなたがたに詳しくお話するように努めてみましょう。それに、ソクラテスを想い出すことは、じっさい、自分で語るにしても、他人の話を聞くにしても、私にとってはつねに最高の喜びなのですから。

16 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:03
いや、パイドン、あなたの話を聞こうとしてここにいる者たちも、同じ気持でいるのです。さあ、できるだけ正確にすべてのことを詳しく話してみてください。

17 名前:パイドン 2006/12/17 19:08
では申しましょう。じつは、その場に居合わせて私は驚くべき感情を味わったのです。というのは、親しい人の死に立ち会っているというのに、私は悲しみの気持に襲われなかったのです。なぜなら、エケクラテス、あの方はその態度においても言葉においても幸福そうに私には見えたからなのです。ほんとうに、なんと恐れなき高貴なご最期であったことでしょうか。そこで私はこう思いました。この方ならば、神のご配慮なしにハデスの国へ行くことはないだろうし、またその国へ着いてからも、いやしくもそこにだれか幸福な人がいるとすれば、この方こそがその人であろう、と。こういうわけで、不幸に立ち会っている者にとっては当然起こってよさそうな悲しみの気持が、私にはほとんど起こらなかったのです。だが、そうだからと言って、私たちは哲学しているのだと思っても――じっさい、そのときの言論は哲学的なものであったのですが――そういうときにいつもは感ずる愉しい気持も起こりませんでした。いや、まったくなにか奇妙な感情に私はずっととらえられていたのです。あの方は間もなく亡くなられるということを私は考えていたのですが、その私を襲ったのは、喜びと苦しみの入り混じった、今までに経験したことのない感情でした。そして、その場に居合わせた人々はみなほとんど同じような有り様でした。あるときは笑い、あるときは泣いたりして。われわれの仲間の一人のアポロドロスはとくにそうでした。多分、ご存知でしょうね、あの人のことは、またその性格も。

18 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:08
もちろんです。

19 名前:パイドン 2006/12/17 19:10
それなら、おわかりでしょうが、あの人はもうまったくそんな有り様でした。そして、こう言う私自身も、その他の人々も、心乱れた状態にあったのです。

20 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:10
ところで、パイドン、そこにはどんな人々が居合わせたのですか。

21 名前:パイドン 2006/12/17 20:09
アテナイ人では、このアポロドロスのほか、クリトブロス、その父親[のクリトン]、さらにヘルモゲネス、エピゲネス、アイスキネス、アンティステネスなどがいました。それからパイアニア区のクテシッポスとメネクセノス、そのほかにも何人かのアテナイ人がいました。プラトンは病気だったと思います。

22 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:13
だれかほかの都市の人々もいましたか。

23 名前:パイドン 2006/12/17 19:14
ええ、テーパイからはシミアスとケベスとパイドンデスが、メガラからはエウクレイデスとテルプシオンが来ていました。

24 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:14
ではどうでしょう。アリスティッポスとクレオンブロトスはそこにいましたか。

25 名前:パイドン 2006/12/17 19:14
いいえ、アイギナ島にいたという話です。

26 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:15
ほかにだれかいましたか。

27 名前:ナナシンクロニシティ 2006/12/17 19:18
自分もその場に居合わせたかったという感情や興味。
もちろん、下品なものと上品なものがあるが、ここではインティメートなヌースになる。

28 名前:パイドン 2006/12/17 19:19
そこにいたのは、だいたい以上の人々だった、と思います。

29 名前:エケクラテス 2006/12/17 19:19
さあ、それでは、どのような議論がそこでおこなわれたのか、話してくださいませんか。

30 名前:ナナシンクロニシティ 2006/12/17 19:21
二、死に対するソクラテスの態度

(一) ソクラテスの夢――ムーシケーをせよ――
 

31 名前:パイドン 2006/12/17 19:29
では、あなたに初めからすべてを詳しくお話しするように努めてみましょう。この日に先立つ日々においても、いつも、私も他の人々もソクラテスのもとに通うのを常としていました。あの裁判が行われた裁判所のところへ朝早く集まってはね。それは牢獄の近くにあったからです。われわれはいつも、牢獄の門が開かれるまで、お互いに話をしながら待っていました。門はあまり早くは開かれなかったのです。門が開くと、われわれは中へ入ってソクラテスのもとへ行き、たいていはあの人といっしょに一日中を過ごしたのです。とくにあの日は、われわれはいつもより早く集まりました。というのは、その前日、夕方牢獄から出るときに、あの船がデロス島から帰ってきたことを聞いたからです。そこで、われわれはできるだけ早くいつもの場所へ来るようにと、お互いに知らせ合っていたのです。われわれが牢獄へ着くと、いつもはわれわれを入れてくれる門番が出てきて、待っているようにと言いました。かれが命ずるまでは、中へ入らないように、と。「というのは、いま11人の刑務委員がソクラテスの鎖を解いていて、今日かれは死ななければならない、という命令を告げているところだからです」とかれは言いました。しかし、それほど長い間もおかずにかれはやって来て、われわれに入ってもよいと告げました。中へ入ると、いましがた鎖から解かれたソクラテスと、クサンティッペが――むろん、ご存じでしょう――あの方の子供を抱いて側に座っているのが、見えました。クサンティッペはわれわれを見ると、大声をあげて泣き、女たちがよくそう言うようなことを言いました。「ああ、ソクラテス、いまが最後なのですね、この親しい方々があなたに話しかけ、あなたがこの方々に話しかけるのも」。すると、ソクラテスはクリトンの方を見てこう言いました。「クリトン、だれかがこれを家へ連れていってくれるとよいのだが」
こうして、大声で泣き叫び胸を打って悲しむクサンティッペを、クリトンの家の者たちが連れ去ったのです。その間、ソクラテスはベッドの上に起き上がり、脚を折り曲げ、手でそれをさすっていましたが、さすりながら、こう言いました。

32 名前:パイドン 2006/12/17 19:36
「諸君、人々が快と呼んでいるものは、なんとも奇妙なもののようだ。それの反対と思われている苦痛に対して、快は生来なんと不可思議な関係にあることだろう。この両者はけっして同時に人間にやって来ようとはしないのに、だれかが一方を追いかけてつかまえると、ほとんど常に他方をもつかまえさせられる。まるで、二つでありながら、一つの頭で結合されているみたいにね。僕が思うに、もしもアイソポスがこのことに気づいていたならば、きっとこんな話を作ったことだろう。神様は、快と苦が争っているのを和解させようと望まれたが、できなかったので、かれらの頭を一つに結びつけてしまわれた。このために、一方がだれかのところへやって来ると、その後で他方もまたついてくるのである、と。じっさい、僕自身にもちょうどそういうことが起こっているらしい。足枷につながれていたときには、脚にはずっと苦痛があったのだが、快がそれに続いてやって来たようだ」
すると、ケベスがその言葉を受けて言いました。
「ゼウスにかけて、ソクラテス、おかげさまで想い出したことがあるのです。つまり、あなたがお作りになった詩についてです。あなたは以前にはけっして詩などお作りになったことがないのに、ここ牢獄に来て以来、アイソポスの物語を詩に直したりアポロンへの賛歌を作ったりなさっているのですが、いったいどういうお考えでそういうことをしているのか、と、いろいろな人々に私は訊ねられましたが、とくに最近ではエウエノスにそう訊ねられたのです。それで、エウエノスが再び私に訊ねたときに――かれは訊ねるにきまっていますから――私がかれに答えられるようにと、いくらかでも気にかけてくださるならば、なんと言うべきかを教えてください」

33 名前:パイドン 2006/12/17 20:08
それなら、ケベス、かれに本当のことを話してくれたまえ。僕は、かれやかれの作品に対抗しようとしてこれらの詩を作ったのではない。それが容易でないことくらい、僕は知っていたからだ。むしろ、僕は自分が何度も見たある種の夢の意味を確めようとしたのだ。そして、もしかしてこの夢が僕になすようにと命じていたものがこの種の文芸であったとすれば、その責めを果たそうと思ったのだ。その夢とはなにかこんなものだった。これまでの生涯において、しばしば同じ夢が僕を訪れたのだが、それは、その時々に違った姿をしてはいたが、いつも同じことを言うのだった。『ソクラテス、文芸(ムーシケー)を作り(なし)、それを業とせよ』。そして、僕は以前には、僕がずっとしてきたことをこの夢が僕に勧め命じているのだ、と思っていた。ちょうど走者に人々が声援を送るように、と。なぜなら、僕は、哲学こそ最高の文芸であり、僕はそれをしているのだ、と考えていたからだ。しかし、いまや裁判も終わり、神の祭が僕の死を妨げている間に、僕はこう思ったのだ。もしかしてあの夢は通俗的な意味での文芸をなすようにと僕に命じているのかもしれない。それなら、その夢に逆らうことなく、僕はそれをしなければならない、と。なぜなら、夢に従って詩を作り聖なる義務を果たしてからこの世を立ち去る方が、より安全であるからだ。こうして、先ず、僕は現にその祭が行われていた神アポロンへの賛歌を作ったのだ。それから、神への賛歌の後で僕は考えた。詩人というものは、もし本当に詩人[作る人、ポエーテース]であろうとするなら、ロゴス[真実を語る言論]ではなくてミュトス[創作物語]を作らなければならない、と。そして、僕は物語作者ではないのだから、手近にあって僕がよく知っている物語、つまり、アイソポスの物語を取り上げ、それらのうちで最初に思いついたものを詩に直したのだ。さあ、以上のことを、ケベス、エウエノスに言ってくれたまえ。それから、さよならもね。そして、もしもかれに思慮があるならば、できるだけ早く僕の後を追うようにとね。僕は今日この世を立ち去るらしい。アテナイ人がそう命じているのだから」

34 名前:ナナシンクロニシティ 2006/12/17 19:45
 
(二)自殺禁止論――人間は神々の所有物である――
 

35 名前:パイドン 2006/12/17 19:54
すると、シミアスが言いました。「ソクラテス、なんということをあなたはエウエノスに勧めるのです。私はすでにあの人に何度も会ったことがあります。私がかれについて認めたところからすれば、かれが喜んであなたに従うというようなことは、ほとんどあり得ないでしょう」
「なんだって」とあの方は言われました、「エウエノスは哲学者ではないのか」
「哲学者だと私は思います」とシミアスは答えました。
「それならエウエノスにしても、だれにしても、この哲学という仕事にふさわしく関わっている者ならば、僕の勧めに従おうとするだろう。だが、おそらく、かれは自殺はしないだろう。なぜなら、それは許されないことだ、と人々は言っているから」
こう言いながら、ソクラテスは脚を地面に下ろしました。そして、この姿勢で座ったまま残りの対話を続けられたのです。
そこで、ケベスがソクラテスに訊ねました。「それはどういう意味です、ソクラテス。一方で自分自身に暴力を加えることは許されないのに、他方では、哲学者は喜んで死にゆく者の後を追うだろうというのは」
「なんだね、ケベス。君もシミアスもピロラオスと一緒にいたときにこういうことについて聞いてはいなかったのかね」
「はっきりしたことは何も、ソクラテス」
「だが僕もこういうことについては人から聞いたことを話しているのだ。じっさい、人から聞いたことを話す分には、少しももの惜しみする必要はない。それに、これからあの世へ旅立とうとしている者が、あの世への旅路について、それがどんなものであるとわれわれが思っているのかを、検討したり物語ったりすること以上に適切なことは、おそらくないだろう。じっさい、日没までの時間のあいだに、他になにをすることができるだろうか」
「それなら、ソクラテス、一体全体どんな理由に基づいて、自分自身を殺すことは許されない、と人々は言うのでしょうか。というのは、確かに私は、あなたが今しがた訊ねられたことですが、ピロラオスから、かれがわれわれの所に滞在していた時に、それはなすべきではない、という話は聞きました。他の何人かの人々からも、確かに同じ話を聞きました。しかし、これらのことについて明確なことは、未だかつて、だれからも、なにも、私は聞いたことがありません」

36 名前:パイドン 2006/12/17 19:59
「では、一生懸命にならなければいけないね」とソクラテスは言われました、「もしかして、聞けるかもしれないからね。だが、おそらく、君には驚くべきことに思われるだろう。人間にとって生きることよりは死ぬことの方がより善いということだけが、他のすべてのこととは違って、例外なしに無条件的であり、他のものごとの場合のように、ある時ある人には、という条件がけっして付かない、ということは。それだのに、死ぬことの方がより善い人間たちにとって、自分自身にその善いことをなすのは不敬虔な行為であり、善をなしてくれる他者を待たなければならない、というのは、これもまた、おそらく、君には驚くべきことに思われるだろうね」
すると、ケベスは微笑して、「ゼウスよ、ご覧くだせえ」とお国なまりで言いました。
「そうだ」とソクラテスは言われました、「そういう風に表現されると、不条理なことのように思われるだろう。それにもかかわらず、この説には、おそらく、ある根拠があるのだ。じっさい、これらについては秘教の教義の中で語られている根拠があるのだが、それによると、われわれ人間はある牢獄の中にいて、そこから自分自身を解放して、逃げ出してはならないのである。これは、僕には、なにか高邁な、容易にはその真意を見抜けない思想のように思われる。それにもかかわらず、少なくともこのことは、ケベス、僕には正しく語られていると思われる。すなわち、神々はわれわれ人間を配慮する者であり、われわれ人間は神々の所有物(奴隷)の一つである、と。君にはそうだと思われないかね」

37 名前:パイドン 2006/12/17 20:06
「そうだと思います」とケベスは答えました。
「それなら、君にしたって、君の所有物の一つが、君がそれの死を望むという意思表示もしていないのに、自分自身を殺すとなれば、それに対して腹を立て、もしなにか処罰の手段をもっていれば、処刑するだろう」
「まったくです」
「では、その意味では、おそらく、現にわれわれの眼前にあるような何らかの必然を神が送りたもうまでは、自分自身を殺してはいけない、ということは、根拠のないことではない」
「そうです、その点はたしかにそのように思われます」とケベスは言いました。「しかし、今しがたあなたが言われたこと、つまり、哲学者は喜んで死のうとするという点は、ソクラテス、こちらの方は理屈に合わないことのように思われます。もしも、今しがたわれわれが話し合っていたこと、すなわち、神はわれわれを配慮する方であり、われわれは神の所有物である、という説が充分根拠をもっているとすればですね。なぜなら、もっとも思慮のある者(哲学者)たちが、存在するもののうちで最善の監督者である神がかれらを監督してくれている、その配慮のうちから立ち去るというのに、憤慨しないというのは理屈に合わないからです。というのは、かれは、自由の身になれば、自分で自分自身をより良く配慮するだろうとは思わないからです。いや、無思慮な人ならばそういうことを考えるかもしれません。主人からは逃亡すべきである、と。そして、善い主人からは逃亡すべきではなく、むしろ、できるだけかれのもとに留まるべきである、とは考えないでしょう。こうして、かれは無考えに脱走するでしょう。しかし、思慮分別のある人は自分自身より優れた方のもとにいつも居ようと望むでしょう。だが、そうであれば、ソクラテス、今しがた言われたこととは反対のことが、道理にかなったことなのです。すなわち、思慮のある者たちの方が死に際して憤慨し、無思慮な者たちの方が歓喜する、というのがふさわしいのです」

38 名前:ナナシンクロニシティ 2007/01/09 21:09
ソクラテスはこれを聞いてケベスの執拗な議論を喜んでいるように、僕には思われました。そして、われわれを見ながらこう言われました。「ほら、いつもケベスはなんのかんのと議論の種を探しだし、ひとがなにを言っても、それをすぐには信じようとはしないのだ」
すると、シミアスが言いました。「いや、ソクラテス、今の場合は、ケベスはなにか意味のあることを言っている、と私自身にも思われるのです。というのは、いったいなにを望んで、本当に智恵のある人々が自分自身よりも優れた主人たちから逃げ出して、平気でかれらから離れることができるのでしょうか。それに、ケベスはこの議論をあなたに向けている、と私には思えます。なぜなら、あなたはこんなにも平然として、われわれのもとを立ち去り、また、善い支配者であるとあなた自身も認めている神々のもとを立ち去るのですから」
「君たちの言うことは正しい。君たちはこう言いたいのだろう。これらの点に関して、僕はあたかも法廷にいるかのように弁明しなければならない、と」
「まったく、その通りです」とシミアスは言いました。

39 名前:ナナシンクロニシティ 2007/01/09 21:14
「さあ、それでは」とあの方は言われました、「君たちに対して、裁判官たちに対してよりも、もっと説得的に弁明することを試みてみよう。なぜなら、シミアスにケベス、もしも僕が、第一に、この世を支配する神々とは別の賢くて善い神々のもとにこれから行くだろうということ、第二に、この世の人々よりはより優れた死んだ人々のもとにも行くだろうということ、これらのことを信じていなかったとすれば、僕は、死に対して憤慨しなければ、不正を犯したことになるだろう。だが、事実はどうかといえば、よく承知しておいてもらいたいのだが、僕は善い人々のもとへ行くだろう、という希望をもっているのだ。もっとも、この点は僕はあまり強く断言するつもりはないが、しかし、非常に善い主人である神々のもとに行くだろう、という点は、なにかこの種のことで他に僕が断言するかもしれないことがあるとすれば、これこそがそれだ、ということをよく承知してもらいたい。だから、これらの理由によって、僕は[希望をもたない人々と]同じようには憤慨しないのだ。むしろ、僕は、死者たちには何かが有る、という善い希望をもっている。しかも、古い言い伝えにあるように、悪い人々にとってよりは、善い人々にとっては遥かに善い何かが待っているのだ、と」

40 名前:ナナシンクロニシティ 2010/01/01 11:01
http://tukipie.net/bbs/test/read.cgi/sentimental/1245335808/
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41 名前:P 2013/12/22 13:29
ハイドン

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