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プラトン 『饗宴』
5 名前:名前欄空白 2009/06/27 01:43
『のみならず、対手のために死のうとまで決心する者はただ愛する者だけである。しかも単に男のみならず、女をも含めて。この説に対してはペリヤスの娘のアルケスティスもまたヘラス人の前に充分な証拠を提供する。その夫にはまだ父親も母親もあったのに、独り彼女だけが彼のために死のうと決心したのである。愛(エロス)の故に夫に対する彼女の愛着ははるかに彼らを凌駕していた、その結果両親は息子にとってあかの他人に過ぎず、単に名前の上の同族であることが証明されるに至ったのである。またこういう行為を為遂げたので、彼女は人間のみならず神々にすらもきわめて称揚すべき行為をしたものと思われた。それだからこそ、多くの美しい事を為遂げた者が数多い中で、その霊魂がふたたび冥府(ハデス)から帰されるというあの栄誉ある賜物を神々から授けられた者はきわめて少数に過ぎないのに、彼女の霊魂をば、神々もその行為を驚嘆するあまりに、帰してくれたのであった。こんな風に神々もまた愛のためにする献身と勇猛心とをきわめて尊重する。これに反してオイアグロスの子オルフェウスをば、神々はその目的を果さずに冥府から引還された。それは彼が争われぬ弾琴者流の柔弱者として見られ、またアルケスティスのように愛のために死ぬ勇猛心無く、ただ生きながら冥府に侵入しようとして狡知を弄したからである。それだからこそ神々もまた当然の罰を課して、彼を婦女の手にかかって死なしめたが、それとは反対に、テティスの息子のアキレウスには誉れを与えてエリュシオンに送ったのだ。というのは、アキレウスは、もしヘクトルを殺せば自分も死なねばならぬが、もし殺さなければ、故郷へ帰り、長寿を保って一生を終ることができるということを母から聴いてよく知っていたにもかかわらず、なお勇敢にもその愛者パトロクロスの救援に赴き、その復讐を果たした後には、単に彼のために死ぬばかりではなくて、さらに彼の後を追うて死ぬことをすら選んだからである。それだからこそ神々もまた非常に彼を嘆賞して、その愛者をそれほどに深く尊重したというので、これに抜群の栄誉を与えたのである。アイスキュロスが、アキレゥスはパトロクロスの愛者だったようにいっているのは無稽である、なぜなら、アキレゥスはパトロクロスのみならず、あらゆる勇士よりも美しかったし(中略)。とはいえもちろん神々は実際愛から出た徳(アレテー)をもっとも貴しとする、しかも彼らがさらにいっそう嘆美し、尊重しかつ恩恵を与えるのは、愛者がその愛する少年に対する時よりも、むしろ愛される者が愛する者に対して愛情を示すときである。けだし愛する者はその愛する少年よりもいっそう神々しい、彼は神に満ちて(エンテオス)いるからである。それ故にこそ神々もまたアキレゥスに、アルケスティスに対して与えた以上の栄誉を授けて、彼をエリュシオンへ送ったのである。

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