モラル・ハラスメント(モラハラ)の補完定義


モラルハラスメント


モラル・ハラスメント(仏: Harcelement moral、英: Mobbing)とは、モラルを装った、あるいはそう思い込みながら為される心への暴力、嫌がらせのこと。モラハラと略すこともある。フランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱した言葉(著書『モラル・ハラスメント~ 人を傷つけずにはいられない』は、日本では1999年に出版された)。イルゴイエンヌは「社会は精神的な暴力に対しては対応が甘いが、精神的な暴力は肉体的な暴力と同じ程度に、場合によっては肉体的な暴力以上に人を傷つけるもので、犯罪である」と述べる[『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』2003年 P236]。しかし言葉や態度等によって繰り返される精神的な暴力は見えづらいため、加害者の目論み通りに隠蔽されている。

安冨歩はmoralの「精神の、形而上学の」という意味を加味し、harcelement moral=「身体的ではなく、精神的・情緒的な次元を通じて行われる継続的ないじめ、いやがらせ、つきまといなどの虐待」と解釈している。[安冨歩『誰が星の王子さまを殺したのか 〜モラル・ハラスメントの罠〜』P31]
インターネット上のサイトでは単なる嫌がらせとモラル・ハラスメントを混同させているように見受けられる記述がある。「モラル・ハラスメント」が成立するためには、「いやがらせ」が行われると共に、それが隠ぺいされねばならない。「いやがらせ」と「いやがらせの隠蔽」とが同時に行われることが、モラル・ハラスメントの成立にとって、決定的に重要である。[同P31]

加藤諦三は「愛」だと思い込んで相手を支配する「サディズムの変装」をモラルハラスメントをする人自身が理解できない側面を指摘している。
モラルハラスメントの区別

モラルハラスメントの誘い
心理的に健康な人の誘いは好意である。何かを勧める時には相手の事を考えて勧めている。断るのも自由である [加藤諦三『いじめに負けない心理学』]。モラルハラスメンターの場合、特定の人をつかまえて離さない。「あなたさえ幸せになれば、私は云々」と言いながら追い詰める(好意的サディズム)。加害者意識はない。[加藤諦三『モラル・ハラスメントの心理構造 〜見せかけの愛で他人を苦しめる人〜』P.114]

潔癖症(強迫障害)とモラルハラスメントの違い
どちらも自分の常識がそのコミュニティーにおける六法全書であり、非我を受け入れられない点においては共通しているが、被害者が特定の人物か否かで違いがある。潔癖症の場合は人々(汚くて思考に疎く劣っている風に見える)がその常識を理解しないとか従わない事自体が信じられない問題になる。『なんでこうしないの!?』。 一方でモラルハラスメンターの場合(その人間らが常識を理解できないのは無宗教・個人主義の育ちだからだと思っている。そのようなフラストレーションを晴らすために)特定の人物が常識から逸脱する事を待っている。そしてひとたび逸脱すれば、その情報を流布し、大々的に取り扱う。『みんなが君の事を心配していたよ?』。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.178]
 
モラル・ハラスメント加害者の人格・心理構造


モラルハラスメントの加害者になりやすいのは、主に自己愛性人格障害(=他人は自分のために存在している)(特別扱いを求める{=ありのままの自分を受け入れられない})『モラハラ資料』サイコパス[ref]の人物で[香山リカ 『知らずに他人を傷つける人たち』 P.100]、サイコパスのほうが病理が深いとされる。[同P115]

マリー=フランス・イルゴイエンヌによる「自己愛的な変質者」[イルゴイエンヌ(2006) p.9]:誰かから奪うことを欲している同 p.241、共感能力がない、普通の人なら罪悪感を持ってしまうような言動を平気で出来る、内心の葛藤を自身で引き受けることが出来ず外部に向ける、自身を守るために他人を破壊する必要を持つという「変質性」を持つpp.209 - 210。子供の頃に受けた何かのトラウマによってなる性格だと考えられるがpp.12, 211, 222 - 224, 227 - 228、原因は不明。そのような特徴から「症状のない精神病者」と理解されるpp.210 - 211。加害者の攻撃性はナルシシズムが病的に拡大されたものであるpp.211 - 215pp.9 - 10pp.209 - 228。モラル・ハラスメントの加害者は、自分が「常識」であり、真実や善悪の判定者であるかのようにふるまいp.215、優れた人物であるという印象を与えようとし、自分の欠点や疚しさに気づかないようにするために他人の欠点や疚しさを暴きたてp.216、賞賛してもらうために他人を必要とする。しかし他人を必要としつつも、モラル・ハラスメンターの論理では、他人を尊重するなどという考えは存在しない。そのため相手を尊重するように振る舞われる。モラル・ハラスメンターに他人の気持ちは存在しない。加害者はなぜか怨恨を抱きやすく、自分より弱い者に自分の問題を押しつける事によってその苦しみから逃れるp.256。相手の弱みを見つけ暴き攻撃することによって優位性を保とうとする。この時その相手と言うのは、自己愛的な変質者の心のなかでは自分の怨恨を償う責任のある人間、すなわち破壊されなければならない人間である。その行為には正当性がある。見えない攻撃を繰り返し、その人間のアイデンティティーが破壊されていくのを見て自身の自尊心を満足させる。[『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』2003年 P338]

カレン・ホルナイによると、モラル・ハラスメンターのサディズムは攻撃的パーソナリティーでは顕著に表れ、わかりやすい直接攻撃となるが、迎合的パーソナリティーの人の場合は狡猾に表れる。迎合的パーソナリティーの人によるモラルハラスメントは、相手を迎え入れて優しい言葉で誘惑し、非言語コミュニケーションで相手を攻撃する。悪口も言わず、言葉の暴力も使わず、善い人を装いながら、あるいは自分自身でそう思い込みながら、相手を陥れていく。攻撃的パーソナリティーの場合は「不満」で、迎合的パーソナリティーの場合は「不安」が基になっている。[加藤諦三『モラル・ハラスメントの心理構造』P.114]
モラル・ハラスメンターの特徴・行動パターン(;例)


  • 天体は自分を中心に運行している。
  • 自分以外の人間はすべて家来に見えている。
  • 責任を他人に押し付ける[イルゴイエンヌ(2006) pp.224 - 225]。(体裁的には引き受けている)
  • 些細な物事で勝負になる。負けそうになると去る(ありのままの自分を受け入れられない)。
  • 猫なで声や慇懃無礼[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.96]など反動形成が目立つ。
  • 声高に「いい人」として人前に現れる事が多い。[加藤諦三 『いじめに負けない心理学』 P.155]
  • 「ちょっとだけでいいですから」。(最初から計画的に相手を乗せようとして)「軒先だけでも貸していただけないでしょうか」[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.119]
  • 劣等感を平等化させる魂胆から「人は皆同じである」という倫理を押し付ける。
  • ミスをした際の注意の仕方が「気をつけろ」ではなく「なんで茶碗を割るのですか?」[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 ]
  • 子ども「今日は体操を褒められた」。モラルハラスメントの親「いつも下手だったからね」[同P.78]
  • 子供に反抗期がない(信頼関係がない)。[同P.181]
  • パラノイア誘発者としての側面がある[安冨歩『誰が星の王子さまを殺したのか 〜モラル・ハラスメントの罠〜』P.209]。例:ジュレーバーの教育理念「人間の本性の高貴な種は、その純粋さのうちにほとんど自らみごとに発芽するものである。ただそれには、劣悪な種、雑草を見つけ出し、遅れることなく破壊せねばならない。(中略)子供のうちに余計なものをすべて抑圧し、遠のけておくことで、子供が自らの習慣とすべきことに向けて辛抱強く導き、子供の勝手にさせておかないようにせよ」。ジュレーバーはこのように考えて、あの数々の不気味な教育器具を開発し、自分の子供の人格を破壊した[同P.210]
  • タゲる相手に対し、前に言ったことと今言うことが矛盾していても何も気にならない。人を怒鳴っておいて、それが自分にとって不利益になると分かれば態度をがらりと変える。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.128]
  • 自虐ネタが言えない[加藤諦三 『いじめに負けない心理学』 P.156]か、どこか大仰で不自然である(逃走中の犯罪者{Crime}と似た構造でSinを隠しているため)。
  • 善いことを勧める事によって追い詰める。
  • 相手が嫌がるとわかっていてマイクを渡す。司会を任せる。そしてその原稿を書く。
  • 縁の下の力持ちとなり、自分は「愛の人」となっている(本質にあるのは憎しみと幼児性)。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.60]
  • 他人の不幸は蜜の味[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.70]。「統合失調症の母親は子どもが統合失調症になることを必要とする」事と構造が類似。[同 P.173]
  • ネクロフィラスな傾向がある。加藤諦三 『いじめに負けない心理学』 P.155
  • 会合などで標的にも該当する批判が為されたら『君の事だよ』と肘を突く。
  • 車の助手席に座ると態度が変わる。鼻息が荒くなる。
  • 家柄の違いを理解しない。標的が金持ちの場合は卑屈に精神論を語り苦労自慢をする。『大学四年生にもなってお年玉をもらってるって?普通貰わないよね。貰うのを断るよね』。標的が貧乏の場合はゲテ者扱い。
  • 自分は仕事ができる、業績がある、若いときはこれだけがんばった、とやたら自慢や苦労話をする(職場モラハラ)。
  • やたらとプライベートな話題を持ち出し、根掘り葉掘り聞こうとする(相手との関係に不安を持っているケース[渋谷昌三『問題な人』P.139]から、相手が聞かれたくない事を探り出そうという偏執性まで程度に幅がある)。
  • たまに家族サービスをしたときは、過剰に感謝しないと不機嫌になる(家庭内モラハラ)。
  • 際限もなく非現実的なほど高い欲求を周囲の人にする。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.65]
  • 相手の罪の意識を利用しながら相手を操作する。[加藤諦三 『いじめに負けない心理学』 P.65]
  • サイコパスよりは道徳や美学に理解力があるが、日常的には稀薄である。
  • カラオケを歌う輩を馬鹿にしている。
  • アイデンティティがないので、苛めでアイデンティティを得ようとする。[加藤諦三 『いじめに負けない心理学』 P.178]
  • たまに心が純粋なものに揺れ動かされた時、狂喜してその感動をみんなに伝える。『こんな事にボクは私は感動をしているんです!』
  • 加害者はいつも朗らかである。ストレスを溜めていないから。被害者はいつも抑圧的である。それは顔つきにも顕れてくる(→濡れ衣を着せる[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.93])。(罪悪感はない。次の瞬間にはその感情ごと隠滅されている)。
  • モラルハラスメントの過程に於いて、売る前と売った後の不動産屋のように、態度が豹変する。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.140]
  • ある事柄においてのみ感情的恐喝をするのではなく、もともと感情的恐喝が出来る人格である。(感情的恐喝=「お隣同士ですから」[同 P.138]、「あなたのためを想って」[同 P.2]といった言動で、目つき顔つきの違ってる種類のもの)
  • 「あなたと仲良くしたい」(→あなたを丸め込みたい)[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.192]。相手がとまどいを見せれば「あなたは私の事を信じてくれないのでしょうか。私はあなたのことを信じているのに…」[同 P.116]。そのように美辞麗句や大義名分で相手が反対しにくい状況を拵える[同 P.118]。優しく弱い者から搾取する。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.133]
  • 「それは許されることではない」[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.92]
  • 立派な言葉を使う[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.120]。しかしその人の日常生活や内面の世界は、その立派な言葉に相応しいほど立派ではない。[同P.139]
  • 毒を間違えて飲んでしまった人が「水をくれ」と叫ぶ。モラルハラスメンター「待っていてください、今ミネラルウォーターを持ってきますから」[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.90]
  • 恩を着せる(自己無価値感が原因)[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.183]。不安を煽り、解決し、相手に感謝を捧げさせる(マッチポンプ)。その一方で自分への被害はものすごい被害に扱う[同 P.184]。恩を売られるのを拒む[同 P.177]
  • 仕事では相手のミスにつけ込むことによって優位性を保っている。
  • スケープゴートがヘマをして自分に迷惑を与える段取りが用意されている。
  • 誰かが誰かに迷惑をかけると犯罪者的義憤を見せる。
  • 不意にライバルの悪口やダメ出しが始まったら涙を浮かべる。『そんな事ないのに…』
  • 思惑通りに陥れることが出来た時も涙を浮かべている(;たとえるなら冤罪を成立させたときの犯罪人の涙。会社内でロッカーの盗みが最近問題になっている。『自分もこの会社で一度お金を盗まれてるんですよ。ほんとよくわからないし、でも大変なんだろうなと思う{ここで哀しそうな笑みを浮かべる}。誰にも話さないで下さいよ。大袈裟にしたくないから。○○さんだから言うんですよ』。表面化する以前からだが盗んだ者は常人にはない機転{それが生業であるから}で立ち回っている。『◇△さんはオーディオマニアらしいですよ』。すると翌月には工場のケーブル類が無くなる。◎さんは若くて食欲が旺盛だ。みんながおもしろがっている。すると食堂・休憩所に置かれている沢山のお菓子類が消える。そんな長期にわたる人知れずの努力が実り、やがて、うまく犯罪者が突き止められたとき、彼は感動のあまり涙を浮かべる。((これでもう誰のお金も会社の備品も盗まれなくなるんだね…)) そう心に想いながら)。
  • 予測を誘導する。『最近多いです』
  • 宗教信者の場合、背後から念をかける。『君はその程度の者なのだよ』
  • 神に伝える。「メシア様。いつもご加護のほどありがとうございます。メシア様」「この前◎●様という方を教所にお誘いしたのですが、周りの人に『そのお寺は新興宗教だから行ったらだめだよ』『取り込まれるよ』と言われましたようで、その方は来れなくなってしまいました。」「その方は○□君のすぐ近所に住んでみえる方です」「はい。○□君の近所の方です。メシア・エンカテーレ様」「はい。○□君のすぐ御近所の方です。」
  • 知識を拒む(「人は知識を得れば『自分は知っている』と悦に入る」といったニヒリズムが、現実をタブー視する無意識の構造と結託している)。
  • 趣味や宗教を強要する[渋谷昌三『問題な人』P.157]。ほかに趣味がない場合、柔軟性がなく頭が固い[渋谷昌三『問題な人』P.158]
  • しつこい人であることが多い。心に問題がある。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.185]
  • 自分が支持(自己と同化)する人や団体を離れると裏切り者のユダとされる。『この教団を離れたからあの方はあんなに不幸になった』(論点先取)

サイコパスを「人間社会の捕食者」[ロバート・D・ヘア『診断名サイコパス』]とするのなら、モラルハラスメンターは「精神の捕食者」である。誰かがみんなの前で話しているときにはその話を楽しまず、よほど思想を共にする差し障りのない人物でない限り、攻撃材料を探っている。自分を敬わない者が自分とは関わりのない世界で興じているのを見ると、それがたとえ自分の子供であってもその楽しみを奪おうとする思考が繰り広げられる。その時にその目論見が遂行されなかった場合、次はもっと酷くなる。 羨望がモラル・ハラスメントの原動力である事も多い。物質的・精神的を問わず、自分が持っていないものを持っていたり、魅力的な称賛を受けている人を見ると、普通の人は努力して手に入れるか諦めるかするのだが、モラル・ハラスメントの加害者は、その者を辱め、貶め、破壊することで埋め合わせる。代わりになるものを自身で創造したり、それを所有する者と与え合う関係を築くといった方法が取れず、奪ったり破壊することを考える。標的による優れた作曲や論文や物の考え方も、彼のものではなく、超法規的解釈で加害者によるものになるか、その価値を無に帰される。モラル・ハラスメンターになるような人物は、生まれ持った創造性や才能がそのような方向性に費やされている。

モラル・ハラスメントの常套手段としては、会議や反省会で駄目出しをする(「組織の改善を考えている」)、褒めあげる風にしてこき下ろす、勧誘や仕事を依頼する際は相手に断る時間を与えない、被害者にとって繊細な問題を見つけ出す、それに触れる、省き(ハブ)、干渉(物色、行動監視)、足音、説教、罵声等々。勧められたものを断ったり、ハラスメンターの思想に反する考えを持ち合わせていると人格が変わる。周囲の人間にたいしては根回し、レッテル貼り、予測の誘導。モラルを利用しているため、多くのハラスメンターはステレオタイプな様子をしている。多数派に流れ、他人の価値や視点に自己を補正しながら地位を確保してゆく。犯罪全般に言える事だが、加害者の犯行・隠蔽の機転には被害者や周りの人は速度的についていけない。その思考パターンを持ち合わせていない。だから疑うことすらままならない。また、人はそれを疑う事を恐れる。
「自己愛的な変質者」は人々をひきつけ支配下に置き価値観を任意の方向に誘導する事も得意である。集団に混じっていれば集団的倫理観は次第に壊疽してゆく。モラルハラスメンターは倫理的な発言を多くするが、その念頭には会社の利益とか、動植物や自然環境への想い、チームのレベルアップはない。モラルハラスメントが行われている組織では糾弾癖のある人が増えて目立つようになる。彼・彼女らにそのような風土となる原因はわからない(被害者にのみ原因がわかっている)(原因を根源まで辿ればハラスメンターを養うこととなった主に父親の無慈悲で理不尽な厳しさにあたるが)。(職業よってはモラルハラスメントを評価することがあったり、その状況を面白いと受けとる人達が数多く存在するのも事実で、容易に判断を下すことのできない複雑な問題である)。
『組織はリーダーの力量以上には伸びない』(野村克也)。リーダーの知能がモラルハラスメンターの知能より低い場合、やり放題になる。倫理は利用するもの。通用しない。倫理は判断停止を導いたりタブーを形成するのに都合よく利用される。『それは君のためを想っての事では』『人の悪口を言ってはなりません』。モラルハラスメントが長期化すると、モラルハラスメンターより知能の高い被害者らは組織を離れる。
モラル・ハラスメントの加害者と被害者

加害者・・・被害者が苦しむことが願い[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.111]
被害者・・・「あなたのおかげで私はこんなにも幸せです」と思い込まなくてはならない[同P.112]

成立しやすい特性
加害者 被害者
タイプA タイプC
自己愛性人格障害 ギフテッド
サイコパス メランコリー親和型
成立しやすい状況
密室、慈善団体ref1
成立しやすい関係
加害者 被害者
上司 部下
舅、姑 ref2 婿、嫁 
妻 
子ども
大国 小国
大企業 中小企業
マジョリティ マイノリティ
君主
教祖 信者
信者 信者
古参 新参
公園のママ友 公園のママ友ref2

=逆のパターンもあり。『暴れる系の女たち』(衿野未矢,2006年)によると、近年では女性から男性パートナーへの精神的・身体的暴力も増えてきているようである(「誰にも頼らず自分一人で頑張ろう」と意気込む女性ほどひどいハラスメントを行うようだ)
ref1= 慈善団体がモラハラの温床になることも決して珍しくないとのこと 『モラルハラスメントが人も社会も駄目にする』
ref2= 参考文献:香山リカ 『知らずに他人を傷つける人たち 〜モラルハラスメントという「大人のいじめ」〜』 P.139, P.135

該当しないもの
犬猿の仲


親に「勉強しなさい」と言われて子供が「イヤだ」と言っているような関係ならモラルハラスメントは成立しない。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造 〜見せかけの愛で他人を苦しめる人〜』 P.30]
しかしモラルハラスメントが成立していると「なんで誰々さんのようになれないの」と言われて「あんたの子供だからだよ」ととても言い返せない[同 P.81]。親がありのままの自己を受け入れられないのである。数学の出来なかった親が子供に数学の勉強をさせるもやはり出来ず、テストで30点を取ってくる。そのとき「私の子供だから仕方ないわね」と思わず、その点数にたいして怒りを爆発させる親がいる。それは子供を思い通りにできなかったことへの怒りと、自分の欠点を思い出させられたことへの怒りである[香山リカ 『知らずに他人を傷つける人たち』 P.140]。また、虐めることにより、自分の心を癒やしている。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.82]
ドメスティックバイオレンスのある家庭で育った子供は、成長してから今度は加害者になる確率が高いと言われている渋谷昌三『問題な人』P.180。同様に、モラルハラスメントも輪廻する。子供の肯定感や幸福感は学力が高い低いとはあまり関係ない[香山リカ 『知らずに他人を傷つける人たち』 P.129]。日本の生徒の学力は世界の中でもまだまだトップクラスであるにもかかわらず、自己肯定感に関しては常に下位である。香山リカは、加害者の心理にあるのは単純な「肥大した自己愛」ではなく、「目減りした自己愛」の可能性もあると指摘する。[同 P.130]
モラル・ハラスメント被害者の傾向

モラル・ハラスメントの被害者に選ばれる人間にも傾向が存在する。
  • 主にメランコリー親和型の人間である[イルゴイエンヌ(2006) pp.9 - 10.]。几帳面で秩序を愛し、他者への配慮を働かせ責任感が強い、起こった出来事に対して「自分が悪いのでは」と罪悪感を持ちやすい性格や[同 PP.9-10]、与えることを欲している[同 P.241]ような性格は利用される。
  • さらに、自己愛的な変質者が持っていないものを持っていたり、自身の生活のなかから喜びを引き出していたり[同 pp.218 - 220]、浮世離れしていたり(ギフテッド等)、加害者が我慢していることを我慢していなかったり、自分に出来ている事が出来ていないといった要素が目立つようであると、怒りと怨みを抱かれる。そのような人格の知的弱者で社会的地位の低い者が、偉人である己の存在価値を理解できないでいるとモラルハラスメントは正当化される。
  • フロムのいう神経症的非利己主義の人[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.92]。神経症的な加害者は他人の思いやりとか優しさというものを理解しない[加藤諦三 『いじめに負けない心理学』P.39]。上手く歯車が噛み合ってしまう。
  • 恥ずかしがり屋な人。・・・恥ずかしがり屋の人は、攻撃されて反撃できない(社会学の教授ギルマンチンが、恥ずかしがり屋と自信を持った大学生の子供の頃の違いを10年以上にわたって調査した結果、「子供の頃あなたは苛められたことがありますか」という質問にたいし、自信のある大学生は「はい」と答えたのが0%。恥ずかしがり屋の人は94%の人が「はい」で、94%の人がいじめに対して反撃をしていなかった[加藤諦三 『いじめに負けない心理学』P.73])。神経症的な人は自分に得する人と付き合う。相手の人格を尊敬しているから付き合うのではない[同 P.46]。自身の問題を転嫁し、相手の精神を捕食する変質的な自己愛の餌食になりやすい[同 P.183]
  • 規範意識の強い人。・・・相手を手玉に取ろうとしているのか、誠実で優しい人が言っているのかを区別できない。「存在と当為」の乖離が理解できない。立派な事を言う人はすべて立派な人である、と考えている[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.138]。加害者自身『私はそのような存在である』と無意識のうちに思い込みながら[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.56]、そのような言動を取っているケースもある(盲人が盲人の手を引く構造)。
  • 従順を美徳として育てられた人[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.197]
  • 嘘を見抜ける社会的弱者(脳卒中の罹患者[相手の嘘を99%見抜く方法』]など)
モラル・ハラスメントが成立する過程


モラル・ハラスメントの過程では、加害者は被害者の自由を奪いつつ、自由だと思い込ませている。モラル・ハラスメンターが人を支配しようとする時は、「力」ではなく、「魅力」を用いる(婉曲的な表現や倒置法を好んで使うなど)。次に、ひとつひとつを取ってみればとりたてて問題にするほどのことではないと思えるようなささいな事をもちあげる。被害者の考えや行動を支配・制限しようとする。この段階では、被害者は罪悪感を覚え、周囲は被害者が悪いと思っている。[イルゴイエンヌ(2006) P.250-255]
支配が成立すると、被害者は混乱に陥る。麻酔をかけられたように頭が真っ白になり、考えることができなくなった、とこぼすばかりである[誰が星の王子さまを殺したのか モラル・ハラスメントの罠 P64]。モラルハラスメントの被害者の子供は「僕はクモの網に捕らえられて逃げられないんだよ」と言う。革紐でひっぱられているイヌの絵を描き、そのイヌを自分だと言う。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.201]
被害者が自立しようとすると、ネガキャンや駄目出し、自分の仕事を押し付けるなどの行動を始める[イルゴイエンヌ(2006) pp.10 - 11.]。だが、モラル・ハラスメントのメカニズムが機能しているかぎり、加害者の心には安寧がもたらされるので、第三者から見れば社会的で問題のない「感じのいい人」である。そのため、加害者としてのかずかずの行為が顕在化したとき、周囲には驚きがもたらされ、にわかには信じられず、ハラスメントの否定さえなされる[同 P.228]
モラル・ハラスメントの過程において被害者は加害者の真意をはかりかね、悪意を想像しない。加害者は本質的に正義である事が自身に求められるので、相手の被害妄想になる行為しかしない。加害者も被害者も原因が被害者の側にあると思い込むようになっている[同pp.250 - 259.]。「そうですか?」「そうとってしまうのですね」と被害妄想になるようになっている。[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.28]

モラル・ハラスメントの加害者が行う個々の攻撃行動は、普通の人でも時にやってしまう事ではあるが、普通の人が良心の呵責を感じるところを、「本物の加害者」[イルゴイエンヌ(2006) p.11]は自身のほうが被害者だという意識が根底にある(自己愛性人格障害)。反対に、耐えかねた被害者が加害者に肉体的な暴力をふるってしまうこともよく起こる。或いはモノに当たるなどをして、それを大問題にすることもある。それらを誘導的に仕掛ける(上級テクニック)ことを得意とする者もいる[同 P.19]。モラルハラスメントの加害者が自身がモラハラ被害者であると、被害者を訴えているケースもある[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.172]
モラル・ハラスメントの加害者は自分のしていることを、周りにも相手にも気づかれないようにして、巧みに標的を傷つけていく。その結果、被害者は肉体的にも精神的にもかなり苦しんでいるのにその苦しみの原因がわからず、随分時間がたってからようやく自分がモラル・ハラスメントを受けていた事に気づく。また何年も経過した後でも被害者は、行動する度に加害者から行われたモラル・ハラスメントが頭に蘇り、PTSDに長期的に悩み苦しむこともある[『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』]

2002年1月、フランスでは職場におけるモラル・ハラスメントを禁止する法律が制定された。2004年、モラル・ハラスメントは犯罪となり、実刑懲役1年と1万5千ユーロの罰金となる。2014年8月の法改正により、懲役2年、3万ユーロの罰金(被害の深刻度により実刑・罰金は変動する)。

モラル・ハラスメントは、宗教とカルトの区別のように、非常に難解で特定のし難い怪奇な精神の表れである。2015年現在、日本においては厚生労働省や法務省など政府関係のサイト・配布物にはモラルハラスメントという表記はなく「パワーハラスメント・いじめ・嫌がらせ」といった表現で包括されている。モラルハラスメントの周知徹底は、弁護士事務所や民間相談機関、個人などが開設したサイトが担っている部分が大きいのが現状である(それは被害者にしか解らない事柄であるし、逆にモラルハラスメント・ハラスメントやモラルハラスメントハラスメント・ハラスメントを生じさせる懸念があるから仕方のないことではある)。
モラル・ハラスメントのセカンド・ハラスメント


セカンド・ハラスメントを行う人には少なくとも以下のようなものがある。
  1. 悪質な「担当者」あるいは「専門家」
  2. 同じ虐待者に脅かされて混乱している周辺の人物
  3. 同じような虐待者によるハラスメント被害を受けており、それを受け入れているお節介な人
  4. その状況を面白おかしく笑って加担する人、楽しんでいる人
「モラルハラスメントの二次被害」としては、被害者の抑圧が長引けば被害者自身が周りの人に対して有毒な人になっていく事[加藤諦三 『モラル・ハラスメントの心理構造』 P.52]。また、被害者は更に弱いものを見つけさらなる被害者を生みだすという連鎖もある。[同 P.93]
 
モラル・ハラスメントの因果応報


「同僚の女の子が年配の女性からモラハラされて悩んでた。『相手の幸せを願えば、仲良くなるよ。嫌がらせもなくなるよ』ってアドバイスした。その後、私は別の女性から陰湿なパワハラ・モラハラ受けることになった。世の中にはそれが通じない相手もいることがわかった。あなたの悔しさ、わかってなくてゴメンね」。
「他部署のモラハラ男は、新入社員を長年に渡っていじめ続け、何人も辞めさせてきた。被害者達は上司に報告する勇気もなく泣き寝入りするだけで、先輩達も呆れて何も言わなかったからそいつのやりたい放題になっていた。そして今回も、そいつは例のごとく去年入った大人しそうな女の子を今年の6月頃までタゲって苛めてた。ところが、その相手が悪かった。その女の子はそれまでそいつにされた事、言われた事をぜんぶメモなり録音なりしてて証拠がたまった所でそれらを全て上司に突き付け、『今度何かあったら適切な機関に訴える』と言ったらしい。上司も自部署の予想外の実態にショックを受けたようで、またこれをきっかけに過去のそいつの行いも明らかとなった。結局そいつは急遽、遠い地方に左遷される事になった。」
このように因果応報がわかりやすく具体化するのは少数派ではある。悔しい思いをして報われない多数の人は、願望の域を出ない因果応報論を語る。


【確実に言えること】
  • モラルハラスメンターは生まれ持った才能や脳みそのマージンの多くをモラルハラスメントを工夫したり達成するために費やされているため、無能で無学で無趣味になる事である。モラルハラスメントの程度が深刻なほど、音楽や文学やスポーツやカラオケが理解できない。理解出来たとしても浅い。それらの知識や経験は対外的な代物になる。(夢中になれる事はもっぱら自分のことになる。自分の事柄においては趣味が深く内省的で有能である。それは自己愛性の執着であり、ギフテッドのように日記を書くような方向性ではない。みせしめのブログを書くことはあるが。モラルハラスメンターにとってタゲりたい相手が一眼レフを所有するのを見た時の反応は、ひとつに危機感である。共感ではない。自分に対する「みせしめ」だと捉える。カメラは「想い出を保存するため」に所有する機械であるとは発想にない。そのような世界観に満たされている)。
  • 『孤独に勝たなければ、勝負に勝てない』(落合博満ほか)。とすれば、モラルハラスメンターはスポーツには向かない。芸術で開花することもない。ビジネスでパイオニアとなる事もない。
  • モラルハラスメンターはステレオタイプな人格となるため、常識を肯定する分だけ逸脱する者を差別する意識を産み出す事となる。差別の観念が強まる分だけ脳梗塞や心筋梗塞などによる突然死のリスクが高まるようだ[Yahoo!ニュースに掲載された記事(IT・科学、2014)]「今なら通報レベルの暴力的躾と家庭内モラハラだった父は、定年と同時に脳梗塞に。今では誰に持論を展開することも出来ない要介護生活です。体はある程度普通に生活出来ますが、不思議とあれだけ煩かった言葉がダメになりました」。
  • DV夫に多かったのは、別れた後に因果応報が生じるという書き込みだった。何故かはよくわからない。それまでは被害者が身代り御守りだったのだろうな。
  • モラルハラスメントは輪廻する。創造力が乏しく、また創造力があったとしてもモラルハラスメントの創造性に向けられているため、モラルハラスメントは子どもにも向けられる。虐待は輪廻すると言うが、それと同じ仕組みで子どもはモラハラの人格を養うこととなる。
  • 振り子現象。
モラル・ハラスメントの存在意義

  • 格言が生み出される。 (『美徳は、偽装された悪徳である』 ラ・ロシュフコー)
  • モラルハラスメントを反面教師にすることによって、真実とはなにかを考えるようになる。
  • 罪を憎んで人を憎まずの修業。
モラル・ハラスメント加害者の治療

自己愛性人格障害が直接の原因になっている場合、「病気だが治らない」とされる。(カウンセリングを行っても、どのようにより高度な偽装や演出をするかといった関わり方になってくる。修正が効かない)。
しかし日本人特有の対人下手やコミュニケーション障害が原因となっている場合、教育やコミュニケーションのトレーニングで改善は可能ではないかと考える医者もいる。[香山リカ 『知らずに他人を傷つける人たち』 P.108]
こんなときは

とりあへず / つらいときは / 苦しいときは / 痛いときは / かなしい時 / むかついているときは / 損したときは / 宗教性の精神病 / 社会的に逼迫した時 / 憂鬱なとき / ヒステリーなど / 頭を使い過ぎたとき / 耳鳴りは / しゃっくりは / 寝れない時 / 落ち着かないとき / 下痢のときは / 救われるには / 嫌な顔が離れない時は / 恨みがぶり返す時は / 邪悪な何かに囚われる時は / 思惑、猜疑、妄想 / 苦手な局面 / いやな仕事 / ラジカルな何かに囚われたが / かゆいときは / 治りが遅いときは / 満たされないとき / 性欲を遮るには / 不安を祓いたい時は / 健康不安は / 死を恐れる時は