TEACのショータイム。TANNOYキングダムの再生。
ものすごい音だった。世界が包み込まれているという感覚。この大ホールであの音量で再生してなんの苦しさもストレスもない音。僕はあの大音量の中でノルウェーの森を読んでいた。なんて贅沢なんだろう、って思いながら。緑のお父さんにきゅうりを食べさせるシーンだった。鮮明に覚えている。脳腫瘍かなんかで頭蓋骨開いて手術してボケていて何も食べたがらないお父さんに、ワタナベくんは神学の話を独り言のように話しながらきゅうりをかじっていた。そのカリンカリンという音が病室に響いて、おいしそうに思ったのかそのお父さんが欲して、全部平らげてしまった。静謐な病室のシーン、僕はあの爆音の中だった。
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